第2章 上司の優しさ

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私の家まで約40分…。 道を説明しながらドキドキドキドキしてた。 佐伯さんが、私の家に……!! “お礼にお茶でもどうですか?” その言葉が喉の奥で止まったまま出てこない。 上司を家に誘うなんて、失礼窮まりない。分かってる。 でも、もう少し佐伯さんと一緒にいれたらなぁ…なんて希望を抱いている。 今日だけっ!明日からはもう何ものぞみません! 「ここ??」 佐伯さんが、私のアパートを指さした。 「は、はい!ここですっ…ありがとうございましたっ」 ゆっくり停車する車。 人通りも、車通りも少ない狭い道。 佐伯さんが、ため息をついてハンドルにもたれかかった。 「お前、こんなとこで暮らしてるのか?大丈夫かよ?女一人じゃ危なくないか??」 「平気ですよ」 もう半年くらい住んでるけど、そんな危険な目に合った事は一度もない。 一本向こうの道は国道だし、コンビニもスーパーもある。 「私なんか誰も襲ってくれませんよ」 笑って答えたら、佐伯さんも笑った。 「だよな。お前みたいな女、男が興味を持つわけねーか」 ズキッ……… グサッ……… 心に、得体のしれない衝撃が・・・。 「アハハ、そうですそうです…」 悲しい事を言われたのに笑ってしまう私は、どこまでバカなんだろう…。 「じゃ…また明日。寝坊するなよ」 帰ってしまう。 当たり前だ。 私なんかに、佐伯さんが興味を持ってくれる訳がない。 「………はい。…おやすみなさい」 「おぅ!」 走り去っていく車…。 やっぱり佐伯さんは、 私にとって高嶺の花。 家に呼べる分際なんかじゃない。 断られる前に、気付いてよかった……。 大きく息を吐いて、空を見上げた。 私には小さな幸せだけで充分…。 大きな幸せは、望まない。 佐伯ワールドから撤退しますっ!
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