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「やっと戻ってきたか松田藍子……」
静かなオフィスに響く佐伯さんの声。
ゆっくり顔を上げた。
鹿野さん達は、いない…。
課長も、いない。
佐伯さん一人だ。
「………遅くなってすみませんでした」
窓際のデスクにいる佐伯さんの元へ駆け寄った。
「私何かミスしましたかっ」
「あのさぁ」
本日、佐伯さんからの初めての冷ややかな視線…。
よっぽど怒っているのか、その視線だけで倒れてしまいそうになる。
いったい私はどんなミスをしてしまったのか。
「さっき俺のパソコンがフリーズして…鹿野のパソコンを借りたんだ…」
鹿野さんのパソコン…?
佐伯さんが自分の席から立ち上がって、鹿野さんの席にドスンと座った。
「これ、覚えてるか」
私を呼ぶ佐伯さん。
荷物を置いて、佐伯さんの後ろに立った。
「あ……………」
佐伯さんが私に見せてくれたのは、鹿野さんが私に押し付けたミスの、元のデータ…。
残ってたんだ……。
「どういう事だ?説明しろ。何で鹿野のパソコンにこのデータが入ってるんだ」
「…………………」
鹿野さんの事だから、きっちり消去したと思ってた…。
「鹿野のミスだったのか?」
どうしよう……。
私が認めたら、鹿野さんの立場がなくなる…。
パソコンの画面じゃなくて、佐伯さんの顔をジッと見つめた。
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