第3章 上司に片思い

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「やっと戻ってきたか松田藍子……」 静かなオフィスに響く佐伯さんの声。 ゆっくり顔を上げた。 鹿野さん達は、いない…。 課長も、いない。 佐伯さん一人だ。 「………遅くなってすみませんでした」 窓際のデスクにいる佐伯さんの元へ駆け寄った。 「私何かミスしましたかっ」 「あのさぁ」 本日、佐伯さんからの初めての冷ややかな視線…。 よっぽど怒っているのか、その視線だけで倒れてしまいそうになる。 いったい私はどんなミスをしてしまったのか。 「さっき俺のパソコンがフリーズして…鹿野のパソコンを借りたんだ…」 鹿野さんのパソコン…? 佐伯さんが自分の席から立ち上がって、鹿野さんの席にドスンと座った。 「これ、覚えてるか」 私を呼ぶ佐伯さん。 荷物を置いて、佐伯さんの後ろに立った。 「あ……………」 佐伯さんが私に見せてくれたのは、鹿野さんが私に押し付けたミスの、元のデータ…。 残ってたんだ……。 「どういう事だ?説明しろ。何で鹿野のパソコンにこのデータが入ってるんだ」 「…………………」 鹿野さんの事だから、きっちり消去したと思ってた…。 「鹿野のミスだったのか?」 どうしよう……。 私が認めたら、鹿野さんの立場がなくなる…。 パソコンの画面じゃなくて、佐伯さんの顔をジッと見つめた。
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