第3章 上司に片思い

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佐伯さんとの沈黙合戦が続く…。 時刻は午前0時を回り、警備員に「早く退社して下さい」と言われてしまった。 「……場所を変えるか」 そう呟いて立ち上がる佐伯さん。 自分のコートとカバンを持って、私に「出るぞ」と言った。 今日は、まだ帰れないんだ…。 気が重い…。 重た過ぎる……。 会社を出て、佐伯さんに付いて駐車場に行った。 「乗れ」 佐伯さんの車の助手席。 不謹慎ながらも高鳴る胸。 助手席のドアを開けたら、フワッと甘い芳香剤の匂いがした。 私も車を買ったら絶対にこの芳香剤を買う。 「お前もう飯は食ったよな?」 飯…? そういえば食べてない…。 「まだ…です」 「まだ??お前今日は定時で帰ったんじゃないの?」 「………はい」 足元に置いたアルバムとシフォンケーキ…。 叔母からは、特に連絡はない。 動揺が続いて夜ご飯を食べ損ねたことにも気付いてなかった。 佐伯さんは何か言いたそうな顔をしてたけど、黙って車を発進させた。
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