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「いいんです…。日頃の行いが悪かったんです…。もしあの時私が“違う”と言ったとしてもきっと誰にも信じてもらえなかったと思うから…」
ミスばかりしていた私が否定してもきっと無駄だった。
私をかばってくれる人もいなかった。
現に、私のミスだということであの場は落ち着いた。
認めざるを得なかった。
「バカだなぁっ…何も悪くないお前が謝る必要なんてなかった。鹿野も部下に責任を押し付けるなんてどういうつもりだ」
本気で怒っている。
「もう終わった事なので…」
もういいのに…。
「お前はそんな弱腰でどうするんだ…また違う罪を被せられるぞ!また泣き寝入りするのか?何でちゃんと主張しないんだ」
次は、する。絶対に、負けない。
「…それにあの日…俺に話す機会もあったよな?」
あの日、佐伯さんと一緒に外回りに出た。夜ご飯を一緒に食べた。話す機会はあったけど、あえて話さなかった。
幸いな事にあれから私もミスはしてないし、鹿野さんもパーフェクトに仕事をこなしている。
あの事があったから、お互い慎重になっている。
もう鹿野さんに悩まされてはいない。
「本当にもう…大丈夫ですから」
早くこの話を終わらせないと、どんどんヒートアップしてしまいそう。
今更、大ごとにはしたくない。
「せめて俺にだけは本当の事を言ってほしかった。俺ってそんなに頼りないか?」
「そんな事ないですっ!」
即答してしまった。
「もし…」
もし……??
「二度もこんな事あってはいけないけど、もしまた何かあったらすぐに俺に言うんだぞ!」
佐伯さん………。
「……ありがとうございます」
もう、その言葉だけで充分。
明日からまた頑張れる。
「俺の間違いならお前に謝らないと…と思って呼び出した。こんな時間に悪かったな」
シュンとした佐伯さん、前にもあったね。
「平気です!私は大丈夫ですっ」
ニコニコしながら佐伯さんを見上げたら、頭をポカンと叩かれた。
またゆっくり、佐伯さんの隣を歩く。
「居酒屋、お詫びに奢ってやるから」
「やったー!飲み放題ですか?」
「こんな時間からどれだけ飲む気だよ」
「底無しに飲めます!」
「俺より飲んだら割り勘にする」
「えぇっ!佐伯さん、お酒強いですか?弱いですか?私の相手になりますかっ?」
「どっちが強いかお手並み拝見だな」
「ですねっ」
楽しそう!
ちょっとだけ佐伯さんを近くに感じる事ができた冬の夜。
やっぱり好きみたい、佐伯さんの事。
佐伯さんと他愛のない会話が出来る事に幸せを感じる。
普段オフィスでは近寄り難い人だからかな。
叶わない恋でいい。
きっと私はこれからもっと佐伯さんに惹かれていく。
佐伯さんのうちに秘めた、
誰かへの想いに気付く事なく。
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