Prologue『薄れ霞んだ記憶』

2/3
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
空が紅く染まった秋の終わり頃の夕暮れ。 僕は大きな虫加護を右脇に抱え、息を荒らして空き地に入り、さらに草むらに駆け寄る。 僕は迷いなく手でその草を掻き分ける。 「えっと、ここらへんのはずだけど…。あっ…」 見つけたのは白い蛇。体中に小さく全長20センチにも満たないだろう、紅色の傷をたくさんつけた白い蛇だった。 その蛇は、相当弱っている様で、時折体をくねらせるのみ。 「急がなきゃ」 その蛇を手に持つとびくりと震えるが、まるで身を委ねる様に大人しくなる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!