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携 「おかけになった電話番号は現在電波の届かないところにあるか電源が入っていないためかかりません」
…………野郎。また電源いれてねぇな💢
襲はこの時世の学生にしては携帯を使わない。携帯を使わない人というのを多くの人は電源は入れているけどあまり携帯に触れない人と連想するかもしれない。
しかし襲はその次元を遥かに越えている。
襲は徹底的に使わない。
電源が常時切られているため大切な連絡が届かない。一回充電すれば1ヶ月は保てると言われるぐらい襲は携帯の電源をずっと切っている。
因みに電源を切ったままにしている理由は奴が節約家だからではない。
諸説あるが………まぁその件について俺から言うこと何もはない。
現在時刻は午前10時半。
交流会は午後1時からだそうだから午前11時半頃また連絡いれるか。
それまで勉強でもしてましょ。
落 「さぁて、いい頃合いやな」
午前11時半約五分前
いやしかし、流石にずっと英単語やってるのは気が滅入る。千個近くの単語を書き続けていた手はもう力が入らない。それでも英語が苦手だからやるしかないのだけれど。
? 「落城~」
落 「ん?」
名前を呼ばれた。女性の声だ。このセンター(学校内にある勉強ができる
図書室のような施設)で俺のことを呼び捨てにする女性は一人しかいない。
落 「こんにちは冨永さん」
冨 「久しぶり」
冨永さん。俺が度々つかうこのセンターの管理をしてくれている女性。生徒から相談をよく受けていることからも解るように優しく、大らかな人である。
冨 「全く、最近全然来ないからまたいつ会えるんだろうと思ってたんだから」
落 「すいません。色々な勉強法試行錯誤してたらセンターに来れんくって」
冨 「そっか……」
落 「……?」
その時の冨永さんの表情は嬉しさの他に悲しみや寂しさも含まれているように感じた。
冨 「私ね…………今月いっぱいでここ辞めるんだ」
落 「…………!」
冨永さんはおもむろに白いサポーターがついた左手の甲をさすって続けた。
冨 「この左手をね治せるいいお医者様見つけてね」
落 「それは………おめでとうございます。」
冨 「仕事続けていたら悪化もしちゃってたけど………治せるなら治したいから」
俺も、俺も今治るのなら…………。俺は自分の膝をさすり、そう心の中で呟いた。
冨 「だからさ、落城が来ないから、このまま終わっちゃうのかなぁって心配してたんだぁ。」
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