それが地獄と気付くまで

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   俺たちが滞在していたのは、辛うじて電車が通っているいる程度の田舎町だった。  どうしてこの町に来たかというと、この場所がチヅルの生まれ故郷であり、俺が3年という時間を過ごした土地であるからだ。  レッドスキル達に狙われている以上、同じ場所に永く居続けることはできない。それはこの故郷も同じで、今日はこうしてチヅルの家に荷物を取りに来ている所を狙われた、というわけだ。  こんな生活も、まだ1週間程度しか経過していない。  俺が能力を発現させてから3週間、チヅルが1週間。  俺はよくても、チヅルにとってこの生活は過酷なものとなっているだろう。俺の能力の欠点を補うために常に前衛に立ち続け、戦い続けているのだから。 「行こう。今日のうちにできるだけ遠くに行ったほうがいい」  チヅルはそう言って、華奢な体には不釣り合いな大きな荷物を軽々と持ち上げた。 「いや、それよりも、隣町あたりにしばらく居た方が得策だ」  俺の言葉に、チヅルは首を傾げる。 「どうして……?」 「隣は政府指定の特別直轄領だ。アンチスキルもいる。俺は保護してもらえないが、いざという時にはチヅルだけは保護してもらえる」  俺がそう言うと、チヅルは露骨に顔を曇らせた。 「……わかった。クーフェンがそう言うのなら、私はそれに従うだけ」 「……」  俺は何も言えずに、ただ歩き出した。数年留守にしていたとはいえ、まだ足はこの土地を覚えていてくれた。
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