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空港のターミナルビルに入ると、僕はベンチを見つけてそこに腰を下ろし、その間に沙紀は飛行機の搭乗手続きを済ませ、僕の隣に腰を下ろした。 「ねえ、あなたは私がいなくなると寂しい?」 沙紀は僕にゆっくりと凭れかかりながら言った。 「当たり前だよ。君がいなくなって、僕が寂しくない理由がどこにあるというんだい?」 「本当に?」 「本当だよ」 「私がいなくなっても浮気をしたりしない?」 「もちろんだよ。神に誓ってもそんなことをしたりはしないよ。君を裏切るようなことは決してしないよ」 「信じてる」 沙紀はそう言うと、ゆっくりと顔を僕の顔に近づけ、そして僕の唇に口づけをした。 それはとても柔らかくて優しい口づけだった。 僕は辺りに多くの人がいるのも忘れて、沙紀をぐっと抱き寄せ、深く口づけをした。 おそらく、行き交う人々はそんな僕たちを、好奇の目で見ていたに違いない。 あるいは、明らかに冷やかしのような発言をする者もいたのかもしれない。 だけど、僕は彼らの視線など全く気にはならなかったし、彼からの声など一つも耳に入ってはこなかった。 長い口づけを終えて、沙紀を僕の腕の中から解放すると、沙紀は涙を流していた。 「ねえ、私の選択は正しかったのかしら?」 服の袖口で涙を拭いながら沙紀が言った。 「わからない。確かに君が東京に行ってしまうことは、僕にとってはひどく悲しいことだ。だけど、君は僕の為に、住み慣れた大阪を離れて、東京に行こうとしてくれているんだ。そのことについては、とても嬉しく思っているよ」 「だけど、私がもう少ししっかりしていれば、大阪にいることだってできたはずだわ。大阪にいるままにして、夢を叶えることができたはずだわ」 「そんなことはないよ。君は十分に頑張ったと、僕は思っているよ」 僕はそう言ってから、再び溢れ始めた沙紀の涙を、そっと右手の甲で拭ってあげた。
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