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僕たちはそれからしばらくの間、これからのことについて話をした。 これからのことと言っても大した話ではない。 毎日何時に電話をするだとか、次はいつ大阪に帰ってくるだとか、そういう話だ。 話をしながら、僕は絶望にも近いほどの悲しみを感じていた。 沙紀と離れ離れになることについて、頭の中でどれだけ理解しているつもりになっていても、感情はそれにはついてこない。 僕は、沙紀と離れ離れになることが寂しくて仕方がないのだ。 本当のことを言うのであれば、沙紀を東京になど行かせたくなどない。 いくら僕のためであるとはいえ、彼女と離れ離れになるくらいならば、僕なんてどうなっても構わないと思う。 だけど、もしも僕が沙紀を引き留めたならば、彼女はおそらく、ひどく苦しむことになるに違いない。 これは、彼女の一生がかかった問題でもあるのだ。 単純に僕のことだけではないのだ。 だから、僕がどんなに沙紀を引き留めたいと思っていても、あるいは彼女がどんなに僕に引き留められたいと思っていたとしても、僕は彼女を引き留めるべきではないのだ。 今ほど、時間がゆっくりと進んでくれればいいのにと感じる時はない。 だけど、無情なことに、僕がそう願えば願うほど、時間というのは足早に過ぎ去っていくものなのだ。 気づいたときには、出発時刻が近づいていた。 僕たちは二階の出発ロビーへと向かって階段を上った。
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