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送迎デッキから下を眺めると、何機もの飛行機が、次々と乗客を乗せて、これから向かう先へと飛び立つ準備を整えていた。
沙紀が乗り込む飛行機も、すでにボーディングブリッジに繋がれ、乗客が乗り込み始めている。
沙紀ももう乗り込んでしまったのかもしれないななどと思いながら、僕はじっと飛行機を眺め続けた。
やがて、飛行機がボーディングブリッジから離され、ゆっくりと滑走路に向かって動き始めた。
飛行機は後ろ向きには進めないため、滑走路に出るまでは専用の車で引っ張られる。
やがて、飛行機が滑走路上に出ると、車が離れ、飛行機は自らの力でゆっくりと進み始めた。
そして、指定の位置までゆっくりとした早さで進むと、一度完全に停止した。
これから、沙紀は東京へと向かって大空に飛び立つのだ。
もう、今までのように、ずっと僕のそばにいてはくれない。
そんなことを考えていると、自然と涙が頬を伝った。
「やっぱり行かないでくれ。ずっと僕の側にいてくれ」
僕は心の中で叫んでいた。
沙紀の姿が見えなくなってしまった今となっては、もはや強がることなど僕にはできはしなかった。
だけど、飛行機はそんな僕の気持ちを裏切るかのように、再びゆっくりと進み始めると、一気にそのスピードを上げて、地面から離れた。
そして、みるみるうちにその高度を上げてゆく。
僕は大空へと舞い上がる、沙紀の乗った飛行機を見上げた。
そこには、どこまでも澄み切った青空がどこまでも続いていた。
それはまるで、沙紀の旅立ちと、僕たちの未来を祝福しているかのような空だった。
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