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千里中央駅を発車したモノレールは、大阪中央環状線と中国自動車道のちょうど上を西に向かって走り、やがて大阪大学の前を過ぎると、大きく左に弧を描きながらゆっくりとしたスピードで蛍池駅に到着した。 蛍池駅は、阪急電鉄の主要路線である宝塚線との乗り継ぎ駅であるため、他の駅に比べると比較的乗降客が多い。 僕と沙紀の乗っている車両の客も半分くらいはモノレールを降り、代わりに同じくらいの数の新しい乗客がモノレールに乗り込んできた。 僕と沙紀は黙ったままそんな光景を見ていた。 客の乗降が終わると、扉が音を立ててゆっくりと閉まり、同じようにゆっくりとしたスピードでモノレールは進み始めた。 蛍池駅を出たモノレールは、大きく右に弧を描き、ほとんどUターンするような形で終点の大阪空港駅に滑り込んだ。 僕は、モノレールが完全に停止するのを待ってから、沙紀のボストンバッグを持って立ち上がった。 だけど、隣に座っている沙紀はなかなか立とうとはしなかった。 「どうしたんだい?」 僕は沙紀に問いかけたけれど、沙紀は何も答えてはくれず、相変わらず立ち上がろうともしない。 そうしている間にも、モノレールは折り返しの運転に向けて、新しい乗客を乗せ始めていた。 このままここに座っていれば、僕たちは逆戻りしてしまうだけだ。 「早く行こう。飛行機に遅れてしまうよ」 僕のその言葉で、ようやく沙紀は立ち上がったが、その足取りは重く、未だ何かを躊躇しているように見えた。 もちろん、沙紀が何を躊躇っているのかは、僕にもわかっている。 それでも彼女は、彼女自身が決めた道の為に行かなければならないのだ。 僕だって本当は彼女を見送るのが辛い。 できることであれば、彼女について行きたいというのが本音だ。 だけど、それはできないことなのだ。
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