プロローグ

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---かつて、魔力査定機関『ウィンプス』より【賢帝】の称号を授かった一人の女性がいた。名をユーリという。  ユーリは女性でありながら常に最前線で魔獣と戦い人々を守り続け、そして突然消息を絶った。一人の男と共に。 …まあ、ぶっちゃけて言うとこの女性、俺の母親だ。母は若くから魔法の才能を買われ魔導警団に入団、魔獣や悪党相手に暴れ回っていたらしい。  直接暴れっぷりを見たことはないから詳しくはわからんが、とにかく凄かったんだと。 『暴走天使』  これ、母が持ってた異名。ええ、もちろん吹き出しましたよ、飲んでたコーヒーを盛大にね。掃除大変だったよちくしょうめ。 ……母と共に消息を絶った男、まあぶっちゃけ…いや、ぶっちゃけなくてもこの展開からすると大体予想がつくだろうが、俺の父親だ。  俺の父ドーズは、母ユーリとは真逆で落ちこぼれと呼ばれていたそうだ。しかし、何だかんだで父もちゃっかり異名を持っていたというのだから驚きだ。  案外やるじゃないかと少しだけ見直して、カボーナさんにどんなものだったか聞いてみたところ…哀しきかな、異名なんていうカッコ良い響きとは程遠い、なんとも残念な代物だったのである。 『お情け団員』  母にも言えることなのだが、これでは最早珍名である。  本来優秀な者しか入団できない魔導警団なのだが、父は三日三晩土下座を決め込みほとんど警団上層部のお情けで入団する形となった。父の異名の出所はこれにある。  そんなお情け団員の父、確かに才能は皆無だが正義感だけは人一倍強かったらしく、任務はひとつひとつ全身全霊で臨んでいたそうだ。  だがしかし、正義感だけでどうにかなるほど世の中は甘くないわけで。 父は成果をまったくあげられず解雇寸前まで追い詰められたそうな。 …そしてそれを救ったのが母ユーリだったってわけ。  そのまま二人は付き合い始めて結婚してめでたくゴールイン。笑っちゃうくらい正反対な二人が結婚した理由は想像もつかないが、まあ色々あったんだろうな。 ----そんで突然行方不明。仲良く二人揃ってさ。 …両親について俺が聞かされた事は、まあこれくらいだな。
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