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「死にたくないし死なせたくもない…少し贅沢すぎやしませんかね君。大体さっきのキルノさんの話聞いてた? あくまで二択なんだよ。これじゃ堂々巡りだ、埒があかない」
サディスティック面接官、キルノって名前だったのか。覚えとこ
「そうですね、確かにこれじゃキリがない。では両者共助かる方法が存在しなかった場合についてお答えします。
…その時は、相棒を助けて俺は死にます」
常識的に考えて、魔力が不規則に変動する俺なんて警団にとっては一種の賭け、不安要素でしかない。警団の今後を考えれば俺とその相棒、どちらが生き残った方が有益かなんて言わずもがなだろう。
「さっきまで死にたくないと言っていたはずだが?」
「確かにそう言いましたが俺はこうも言ったはずです、死なせたくないと」
これに対しては今まで沈黙していたキルノさんが急に荒々しく反応した。
「口でならどうとでも言えます! 自己を犠牲にして他人を助けるなど…!」
何故かはわからないが明らかに取り乱した様子のキルノさん。俺は多少動揺したが努めて平静を保ちつつ返事をした。
「そうです、口でならどうとでも言えます。でもそうすることでしか思いを伝えることができないんですから、嘘臭いと思われようがなんだろうが俺は俺の思いを口に出します」
「!!!」
あの時、俺は自分の命と引き換えに『あの人』を守ってやることさえできず、ただ殺されるのを見ていることしかできなかった。
もうあんなのは御免被るね。あんな思いするくらいなら、俺が死んだ方が万倍マシだ。
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