入団試験【実技】

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 エントランスに向かいながら、俺はキルノさんの年齢についての疑問とは別の事柄について思考を巡らせていた。  実を言うと、面接を終え部屋を出る直前に俺は机の上に提出されている履歴書をチラ見していたのだ。もちろん俺以外の三人分を。  野郎二人のはおまけとして、俺が見たかったのは女の名前。んで見てみたら見事に予想的中しやがりまして、やはりあの名前だったわけです。  面接であの女を見て味わった謎の感情ってのは、そういうあれだったわけね。  俺は納得すると同時にひとつ決意した。試験中でも試験後でも何でも、隙あらば彼女に話し掛けてみようと。俺を、覚えているかと。  仮に向こうが俺を忘れていたとしたら、無理にでも俺に関する記憶を引きずり出してくれるわ。  俺は心の中でひとしきり気色悪い笑いを漏らした後、瞬時に頭を試験モードに切り替える。するとまた新たに疑問が湧く。  次の試験何やるんだろ…  どうせすぐにエントランスで概要を聞けるのだがやはり気になってしまう。  まあ何をやるにしてもヘマはしたくない。試験に落ちるのだけはゴメンだ。…だがしかしここで凶報、実は今俺の魔力の調子が芳しくなく、いわゆる『父寄り』な状態に陥っている。このタイミングで実技試験なんてきた時にゃあ俺は間違いなく破滅する。  朝からずっと調子良かったのにいきなりこれだもんな。まったくどこまで気分屋なんだか… などと自分の体質にほとほと呆れている間にエントランスに到着する俺。  エントランスには既にたくさんの受験者が集まっていて、その数はザッと60人前後といったところ。  さてさて、最終的にこれが何人に絞られるのやら…
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