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緊張の有無はさておくとして、カボーナさんの助言通りそろそろ出発しようと思う。では出発するにあたり最終荷物チェックを行おうではないか。
俺は声に出して持ち物の確認をし始めた。
「筆記用具に履歴書、財布と携帯それに『ウィンプス』の査定書…まあこんなもんかな」
「印鑑も持っていきな。それに自信と覚悟、万が一試験に落ちた時に使う言い訳も用意しておくと尚良しだねぇ」
「了解です。でも最後のやつはなるべく用意するまでに留めておきたいですね」
カボーナさんのブラックジョークを受け流しながら俺は荷物の最終チェックを終えた。
髪型や服装を軽く整えた後、俺は玄関に向かい靴を履き替えながらカボーナさんに言った。
「…言い訳、もし使う事になっても勘弁してくださいね」
「最後の最後で弱気になってどうするんだい。…大丈夫さお前ならやれるよ、このあたしが認めた男だし何よりあの二人の、ユーリとドーズの息子なんだからね」
カボーナさんはいつになく真剣な表情で返事をしてくれた。普段と比べて口調も幾分力強くなっているのがわかる。
「ありがとうカボーナさん、なんかやる気出てきましたよ。…じゃあそろそろ行ってきますね」
「礼には及ばないよ、さあ行っておいで」
いつもの緩やかな口調に戻ったカボーナさんに送り出され、俺は玄関の扉を開けて外の世界に一歩足を踏み出した。
ムカつくくらいに空は快晴で、まるで俺の新たな門出を祝福してくれているみたいだった。
試験に合格できなきゃ新たな門出もクソもないんだけどな。…まあいいさ、合格すればいい話だ。
「さて、行きますか」
そして俺は歩きだす。
この先どんな困難が待ち受けていようとも、この歩みを決して止めないと心に誓い俺は進む、前へ。
歩き続けたその道の果てにはきっと、両親がいるはずだから。
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