4人が本棚に入れています
本棚に追加
紗雪に出逢ってから、俺は頻繁に病院へ通うようになった。
紗雪と会うのは、いつも屋上だ。
「あっ、シュー!来てたんだ」
紗雪は俺をシューと呼ぶ。
「サユは相変わらず、明るいな」
だから俺も、紗雪をサユと呼ぶようになった。
「シューだって、相変わらず静かだよ。もっと大声で笑えばいいのに」
サユは、いつも元気だ。
大声で笑ったり、はしゃいだり、まるで患者とは思えない。
屋上の、冷たい風に揺られながら、サユと話すのが好きだ。
人と話すのは、あまり好きではないけど、サユとなら何時間でも話し続けられる。
サユの話がユニークだとか、そういうわけではなく、ただ、とても楽なんだ。
気を使わずにすむし、サユの問い掛けは、いつも簡単で、単純なものばかりだったから。
「シューの夢はなに?」
サユは、真剣に俺の目を見る。
こんなちっぽけな質問をするだけに、目を見る必要があるのか。
「俺の夢は、医者になること」
腕を組んで、気取ってみる。
ホントは思ってもないけど。
「難しそう。勉強大変だね」
サユは首を横に傾けた。
小さい子供みたいで、可愛かった。
「そうでもないよ。夢なんて、努力次第で叶うし」
「えっ、本当!!?」
嬉しそうに、パァッと明るくなった
最初のコメントを投稿しよう!