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「う~るさいっ!」
サユの透き通るように真っ白な腕が、俺の腕を掴んだ。
優しく笑いかけようとした、その刹那、
…サユはガクンと、足からくずれおちた。
「え…」
倒れかけたサユの体を、ギリギリで受け止めた。
目を閉じている。
息はしていた。
でも、俺を掴んだ白い腕が、氷のように冷たくて、怖かった。
突然、死んだみたいに。
どうしよう…サユがっ!!
急に焦りが生じた。
「サユっ…!しっかりしろ!!」
俺は急いでサユを抱き抱え、屋上を出て、父さんのいる理事室へ向かった。
「父さんっ!」
バタン、と音を立てて開いたドアの音が理事室に響く。
「なんだ、衆介。また来てたのか」
「それより、サユが…紗雪が急に倒れたんだ…!!」
父さんは、サユの頬や額を触った。
「落ち着け。いつものことだから、心配することはない」
そう言って父さんは、サユを抱え上げて、サユの部屋まで運んだ。
ベットへ寝かせると、「注射をとってくる」と、部屋を出ていった。
あっさりとした父さんの口調。テキパキとした対応。
全然慌てていない。
これがプロの余裕?
サユが倒れても、なにも出来ない自分に、腹ただしさが芽生えた。
「…シュー」
かすかにサユの声がした。
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