第一章∮出逢う

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あの日、君に出逢わなかったら、きっと僕は今も、楽に死ねる方法を探していただろう。 朝、目を開けると自分の部屋の天井が映る。 それが当たり前なのに、どこかガッカリしてしまう。 「まだ生きてんだ…」 物心ついたときから、俺にはある疑問があった。 …人は何故、生まれるんだ、と。 どうせ死ぬのなら、生まれなければいいんじゃないか。 死ぬとき、苦しまずに死ぬ方法はないのだろうか。 そんなことを考え続けて来た。 小学生の頃、学校で命の勉強をしたことがある。 その時先生に、 『痛みもなく、簡単に死ねる方法はないんですか?』 と聞いたら、おもいっきり殴られて、怒られた思い出がある。 死を考えることの、なにがいけないんだ。 俺は、別に死にたいわけじゃないし、死ぬ予定もない。 ただ単純に、知りたいだけだ。 楽に死ねる方法を。 「衆介ー!?起きてるのー?」 リビングのほうから、母さんの声が聞こえる。 「あぁ」 モソモソと布団から出る。 今日から三月。もうすぐ春だとはいえ、まだ寒い。 まあ、俺が寒がりなだけだが。 パジャマの上にカーデガンを羽織り、リビングへ向かう。 「お母さんとお父さん、今日、夜勤だから」 母さんが俺に、5千円を渡す。
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