4人が本棚に入れています
本棚に追加
あの日、君に出逢わなかったら、きっと僕は今も、楽に死ねる方法を探していただろう。
朝、目を開けると自分の部屋の天井が映る。
それが当たり前なのに、どこかガッカリしてしまう。
「まだ生きてんだ…」
物心ついたときから、俺にはある疑問があった。
…人は何故、生まれるんだ、と。
どうせ死ぬのなら、生まれなければいいんじゃないか。
死ぬとき、苦しまずに死ぬ方法はないのだろうか。
そんなことを考え続けて来た。
小学生の頃、学校で命の勉強をしたことがある。
その時先生に、
『痛みもなく、簡単に死ねる方法はないんですか?』
と聞いたら、おもいっきり殴られて、怒られた思い出がある。
死を考えることの、なにがいけないんだ。
俺は、別に死にたいわけじゃないし、死ぬ予定もない。
ただ単純に、知りたいだけだ。
楽に死ねる方法を。
「衆介ー!?起きてるのー?」
リビングのほうから、母さんの声が聞こえる。
「あぁ」
モソモソと布団から出る。
今日から三月。もうすぐ春だとはいえ、まだ寒い。
まあ、俺が寒がりなだけだが。
パジャマの上にカーデガンを羽織り、リビングへ向かう。
「お母さんとお父さん、今日、夜勤だから」
母さんが俺に、5千円を渡す。
最初のコメントを投稿しよう!