第一章∮出逢う

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ビクッと肩が上下する。 「あぁ、雅美。おはよう」 俺に声をかけたのは、入須雅美(イリス マサミ)。 彼女は恋人だ。 「びっくりさせた?」 「いや、考え事してたんだ」 雅美は美人だ。 髪が長くてストレートで、クルンとまつげは上がっている。 可愛らしさの中に、気品があって、上品で、どこかの国の王女様みたいだ。 でも、今日の雅美は、なんだかいつもと違っていた。 ほんのり桃色な頬と、少し濡れたような唇。 「…化粧してんの?」 雅美はちょっとビックリした顔をしてから、 「に…似合わないかな?」 と恥ずかしそうに言った。 いや、むしろ色っぽすぎて、目のやり場に困る…。 「似合ってなくはないけど、雅美は素顔のほうがいいんじゃない?」 俺が言うと、雅美は『まだ早いかー…』と照れくさそうに笑った。 「あたし四月からコスメ会社に就職するから、練習してみたんだっ」 「こすめ?」 「メイク用品のこと!!」 あぁ、コスメチックな。 そういうのは、あまり詳しくない。 雅美は、高校近くのコスメチック会社へ、入社が決まっていた。 なぜならば、雅美の親が経営しているからだ。 高校も、卒業だ。 受験したのにも関わらず…と思うが、家を継ぐほうが、安定した職につけていいんだろう。
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