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ビクッと肩が上下する。
「あぁ、雅美。おはよう」
俺に声をかけたのは、入須雅美(イリス マサミ)。
彼女は恋人だ。
「びっくりさせた?」
「いや、考え事してたんだ」
雅美は美人だ。
髪が長くてストレートで、クルンとまつげは上がっている。
可愛らしさの中に、気品があって、上品で、どこかの国の王女様みたいだ。
でも、今日の雅美は、なんだかいつもと違っていた。
ほんのり桃色な頬と、少し濡れたような唇。
「…化粧してんの?」
雅美はちょっとビックリした顔をしてから、
「に…似合わないかな?」
と恥ずかしそうに言った。
いや、むしろ色っぽすぎて、目のやり場に困る…。
「似合ってなくはないけど、雅美は素顔のほうがいいんじゃない?」
俺が言うと、雅美は『まだ早いかー…』と照れくさそうに笑った。
「あたし四月からコスメ会社に就職するから、練習してみたんだっ」
「こすめ?」
「メイク用品のこと!!」
あぁ、コスメチックな。
そういうのは、あまり詳しくない。
雅美は、高校近くのコスメチック会社へ、入社が決まっていた。
なぜならば、雅美の親が経営しているからだ。
高校も、卒業だ。
受験したのにも関わらず…と思うが、家を継ぐほうが、安定した職につけていいんだろう。
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