第一章∮出逢う

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「いーよ、別に」 俺は弁当らが入っている袋を、父さんに渡した。 「母さんは?」 「検温だろう。それより、衆介」 父さんが内ポケットから、茶色い小封筒をだした。 「いつものお礼だ。これで好きなもの買いなさい」 中身を見ると、一万円札が二枚入っていた。 「いらねぇよ、金なんて」 「子供が遠慮なんてするな」 父さんは、半ば強引に茶色い封筒を俺に握らせた。 「…どーも」 父さんがかすかに微笑む。 …自分の思い通りになったから、嬉しいのか? 金なんかいらねぇ。 俺が本当に欲しい物は、絶対手に入らない。 「じゃ、帰るわ」 「おぉ、気をつけてな」 そっけない、ありきたりな会話の後、理事室を出た俺は、何も考えず、病院の中をフラフラと歩いた。 気がつくと、屋上に向かっていた。 反射的に、ドアを開ける。 ギギギ―…… 鈍いさびれた音がした。 思いきって、いっぱいまでドアを開ける。 「さ、さみぃ…~っ」 冷たい風が、俺を包む。 それでもこりず、フェンスへ近付いていく。 そういえば、屋上へは来たことなかった。 「…低いな」 病院のくせに、フェイスが、簡単に越えられるんじゃないかってほど、低い。 飛び降りてもいいよ、と言っているようだ。 「…飛び降りてみようか」
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