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しばしの沈黙、電話口からは彼女の泣きじゃくる声。
『昇太…昇太が彼氏だったら良かったのに。浩ちゃんよりも先に、会いたかったな…』
俺は、無言で彼女の言葉を聞いていた。
慰める事すら出来ないとか…
情けない。
「今、何処に居るの?」
やっと出た言葉がこれかよ!
『海が見える場所にいる…』
そう言えば、微かに波の音が…って、何でそんな所に居るんだよ?
『次に生まれ変わった時は…』
「へ?」
『昇太の大切な人になりたいな……ごめんね……さよなら……』
ガチャっ
携帯が地面に落ちた様な音がした。
その後、直ぐに…
水にデカイ石でも投げ込んだ様な音が…
…まさか…そんな…!
俺は必死に叫んだ。
届くはずの無い声を…
彼女に、其処に居て欲しいと強く願った。
でも、もう無理だった…
この願いが届く事はなかった。
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