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二人が起ち上がると同時に、「そろそろ教室に入れー!」と言う教師の声が遠くから聞こえた。
「…そろそろ行かないとか」
「そ、だね」
「ほんと朝からゴメン」
「いやいやいやっ全然大丈夫だから!」
「そう、ならよかった。……じゃあ」
″またね″と言い階段をのぼり始めた桐山の背中を碧衣はじっと見つめる。ーそして、「桐山くん!」引き留めた
ほんとは言おうかずっと迷っていたことがある。これは今わざわざ言わなくてもいいことなのかもしれない
でも、今の桐山くんを見て知って、やっぱり伝えたいなと思った
あたしがあの時逃げなかったらきっと言っていた言葉はー…
「好きって言ってくれてありがとう!嬉しかったよ」
付き合う、付き合わない、それを考える前にまず自分が思ったのがこれだった
″嬉しい″
それだけは間違いなく感じたモノだ。
自分が出来る一番の笑顔で伝えた言葉はちょっと気恥ずかしくて、碧衣は「ただそれだけだからっ」と言って慌てて階段を降りていった
残された桐山は、
「…………これ以上好きにさせてどーすんの」
口に手を当てながからゆっくり階段をのぼっていく。きっとしまりないだろう口元を隠すために。
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