幼なじみ

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昔からそうだった。 あいつは俺がいないとからっきし堕ちる。 由利の手首に伝い続ける鮮血を見て思ったんだ。 こいつは俺がいないとダメなんだと。 「帰ろっ連くん!」 いつものように透明で無垢かつ屈託のない笑顔で俺のところに来たのは、黒木由利(クロキユリ)。 由利とは昔から家が隣どうしで幼なじみだったりする。 昔から俺にしか不思議となつかなくて結構可愛いのに勿体ない。 藍色に近い黒の肩までの髪と黒の綺麗な目。可愛いのに何故お前なんだ、と友達に泣かれたけど正直困った 「どうしたの連くん?考え事?」 由利は心配したらしく伺うような顔つきで俺を覗きこんだ。 そして俺の頬をソッと優しく手で包む 由利の手は、冷たかった。 「どうしたの連くん?私といるときに違いこと考えたら嫉妬するっ」 何に、とは絶対に禁句だった。 頬を含ませて怒る姿は高1の女子とは思えないほど幼かった。 俺も彼女を甘やかして甘やかしまくってると由利はこんなんになってしまった。 今じゃきっと俺がいないと駄目になるんじゃ無いのか。 「なにいってんのさ由利、俺は由利のことしか考えてないんだけど」 戯言と狂言なんか一片たりとも混じってない。 そしてこの笑みも嘘ではない。 由利はふにゃりと微笑んで 「えへへ、だよね!連くんは由利のものだもんね!」 そう笑った彼女は酷く透明で、まるで硝子のようだった。 「連くんは約束したもんねーっ」 「うん、あのときしたよな」 あの日あの時あの瞬間 地球が何回か回った時。 秒針の音は何回なっただろう? 彼女は硝子少女。 透明故に狂いやすい。 純粋故に壊れやすい。 嗚呼、なんて素敵な硝子少女。 それが俺だけのものだなんて。 なんて素敵なお話でしょう!
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