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俺は由利が好きだった。
小鳥のように高いソプラノで紡ぐ声は、自分の名前を呼ばれるたびに、心臓が跳ねた。
由利が純粋に彼氏を愛していると知っておきながら、俺も由利を愛してしまった。
自分の気持ちに気づいた瞬間。
由利から彼氏の、のろけを聞くたびに、悟りたくない何かを気づかされるようで、怖かった。
そしてある日、俺は気づいた。
気づいて、しまった。
叶わない。
彼女を手に入れることなど、きっとできはしない。
悟った瞬間、男が一人、部屋で嘲笑をこぼす状況は、自分から見ても、哀れだった。
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