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数日後……
いまだに隆弘とペコの距離感は変わらず…隆弘は渋々、仕事場へと向かった。
-職場-
『婆さん!もっと分かりやすく教えてくれよ!』
『じゃかーしぃわい!何でこんな簡単なことも分からないのかねぇ!』
あれから今日まで、鯛焼きの作り方や売り方を教えてもらっているのだが…二人の息が合わないのか、全く上達していなかった…
『本当に馬鹿猿だねぇ!こんなんじゃ店開けられないじゃないかぃ!!』
『だー!この糞ばばぁ!だったらもっとハッキリ完結に教えやがれ!』
狭い店の中で悪口の言い合いが飛び交う…勿論、外にも聞こえてる訳で… 道行く人は皆、笑いながら店の前を後にする…
『全く…何で上手く焼けないかねぇ…まだ器材の名称も覚えてないみたいだし…』
婆さんは深い溜め息をつきながら、椅子に腰掛け煙草に火をつける…そして嫌味たらしく隆弘に煙を吹きかけた。
この糞ばばぁ…隆弘は怒りを抑えながら練習に没頭した。
『…何だか痛々しいねぇ…』
『また文句かよ…』
『…アンタの背中だよ…何か辛い事でもあったのかい…』
婆さんは焼きの練習をしている後ろ姿が、何だか小さく見えたのだ…
『…別に対した事じゃないよ…』
『そうかい…話したくないなら言わんでもいいわい。』
婆さんはまた煙草を吸いはじめる。そして、その後は何も話さなくなった…
くそー…この糞ばばぁ…俺が喋るのを分かっててわざと、だんまりを決め込んでるな…嫌味な婆さんだ…
『…何日か前に…女の子をフッたんだよ…それが原因で仲良かった連中ともギクシャクしちゃって………』
隆弘の話を片手に煙草を持ちながら、横を向いたまま耳だけを傾けていた。そして……
『かっ!!いやー若いねぇ…青春だねぇ!』
婆さん…言い方が古いよ…
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