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眠りについた隆弘は夢を見た。それはガキの頃から夢中になっていた、柔道をしている夢。
凄く懐かしい昔の思い出。
何も気にせず、何も恐れず。ただただ柔道だけに集中していた幼い頃。
強さだけを求め、毎日毎日練習に明け暮れていた。
なのに…いつからだろうか。気づけば柔道をやめていた。
あれ…なんで柔道をしなくなったんだっけ…。駄目だ…思い出せない。
………思い出せない………
-AM6:32・大雨-
外から激しく降る雨の音が聞こえ、部屋の窓はガタガタと揺れる。
そんな中、隆弘はゆっくりと目を開いた。
『…………夢…か…』
なんてリアルな夢だ…。
あんなハッキリと過去の夢を見るとは…。
隆弘は大きく溜め息を吐いた。そして少しずつ時間が経つにつれて、頭が覚醒してくる。
『…スゲー雨と風だな。』
今頃気づく。
隆弘が渋々、体を起こすと、左側の方で青色の光りが点滅していた。
『ん?着信…こんな早くに誰からだよ…』
隆弘はイライラを抑えながら、携帯を覗き込み履歴を見る。
【岩本真奈美 5:47】
『…少し前じゃねーかよ…。てか、あのメス豚…こんな時間に電話して馬鹿じゃないのか…』
イライラの制御が出来なくなり、真奈美に一言言ってやろうと電話をかけ直した。
プルルルル…プルルルル…プルルルル……ピ。
真奈美が電話に出た。隆弘は怒りをぶつけてやろうとしたその時…。
『アンタね!!かけ直すのが遅いわよ!!馬鹿じゃないの!!』
逆にスゲー怒られた…。真奈美のあまりのお怒りに、 隆弘は怯み何故か謝った。
『ごめんなさい…』
隆弘は謝ったついでに用件を聞いてみた。あと、何故そんなに怒っているのかを。
『別にたいした用事はないよ。今日仕事休みなのすっかり忘れてて、早く起きちゃったし、暇だから?』
このアマー…隆弘は怒りを通り越して悲しくなっていた。
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