―其ノ壱―

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「あ、いや、すっ、すんません! ですが、鬼神の奴らと鉢合わせになる可能性もありますし」 「ありえませんねぇ。私の顔は鬼神のアホ共にはバレていません。勿論警察にも。私の“言技”は、そういうものです」  クククと、市と呼ばれていたジャグラーは笑い声を漏らす。 「鬼神の奴らは、頭も部下も本当に単細胞。あれなら一週間もあれば我々シックルズに取り込める。少しずつ刈り始めるとしましょうかぁ。収穫収穫」 「言われた通り、鬼神の奴ら一人一人の情報は掴んでいます」 「では行きますかぁ。あ、少し待ってください」  ぐるりと体の向きを変え、黒い星の中心にある左目が友達と話をしているきずなを捉えた。彼の目には“言技の副作用”で、人間一人一人の頭から天へと伸びる白い紐が見える。きずなの奇抜な赤い頭から伸びている紐の本数は、周囲と比べて桁違いに多い。 「面白そうな子を見つけました。後々使えるかもしれませんねぇ」  市は右手をきずなへ向け、言技を発現する。 「見せしめに二、三本刈っときますかぁ」  現れたのは――鼬(イタチ)。一般的な鼬より二回りほど大きい上に、両腕に大きな鎌を持つ――カマイタチ。空中を滑るように進んでいくと、カマイタチはきずなへ向け背後から鎌を振り上げた。
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