―其ノ弐―

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「あれは昨日、ダイスケの家から帰宅する途中のことでした」  翌日、友達になることを諦めないという宣言通り、きずなはひょっこりと大介のいる教室を訪れていた。そして寝たフリを決め込んでいる大介に、一方的に昨日の出来事を語っている。 「女子大生のエミちゃんって友達にあって立ち話してたんだけどね、そんな私の頭上をビュイーンって謎の生物が飛び越えていったの! 早すぎて姿はよく見えなかったんだけど、なんか刃物っぽいものが見えたような気がする。アレが俗にいうUMAって奴なのかな? ねーねーダイスケはどう思う?」  絶賛寝たフリ中の大介は、当然何も答えない。だが、きずなが耳元で魔法の言葉「畳の下のパラダイス」を呟くと、大介は一瞬で頭を起こした。そして血走った目できずなを睨みつける。 「鬼畜な女だな」 「何とでも言えばー。そんで、どう思う?」 「何が?」 「UMAだよUMA!」 「あー……」  大介は考える素振りを見せたが、その顔はとても真面目に考えているようには見えない。実際のところ、大介はきずなに言い返す先程の魔法の言葉の仕返しを考えていた。 「カラスがなんかがお前を餌と間違えたんじゃないか? 小さいから」 「まだ懲りもせず私のコンプレックスに触れるんだね」 「学校指定の上履きまで厚底だとは思ってなかったけどな」  大介の言う通り、きずなの足元は十センチほど底上げされている。 「ほほう。そういうダイスケこそ、学校で孤立して右手に包帯巻いてるなんてモロに中二病じゃない」 「なっ」 「何? その腕には恐るべき力でも隠されてるんですかー?」  クスクスとクラスメイト達から笑い声が聞こえ始めた。大介の顔が見る見るうちに赤くなっていく。 「こっ、これはただの火傷で」 「おっと、次の授業が始まっちゃう」  自分が優勢なうちにきずなはそそくさと教室を出て行った。と思いきや、もう一度戻ってきて出入り口から顔を覗かせた。
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