Act.2 Not try! Do or Not!

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 港に着いたあと、翔は倉庫街に向けて歩き出した。  倉庫街に足を向けた理由は単にドラマのお約束に従ったからだった。  倉庫街に不釣り合いな車の近くの倉庫、たいていのドラマの取引の場面はそこであった。  「別にお約束通り、律儀に倉庫で取引なんてないと思いけど…」  ところが、意外にも翔は見つけてしまった。  取引現場のシーンでよく見るタイプの車、そして近くの倉庫は第3倉庫だった。  「Oh my、そういうのってありかよ…」  音を立てずに扉を開け、高く積み上げられた木箱の陰を進んでいくと、柄の悪そうな連中が向かい合っていた。  念のため周りを見回したが、カメラの類はない。  間違いなく本物の取引である。  「例のモノは?」  「持って来たさ、言った分は持って来たんだろうな」  「勿論だ」  「うわっ、ベタな展開…」  取引中の2人を観察しながらショウはため息をついた。  しかし、翔にはこのあとの展開に思い当たることがあった  取引相手同士が床を滑らせて物品を交換することである。  おまけに、それは足で滑らせるのがよくあるセオリーだった。  人が大切にしていた物をそうやって扱うだなんて、翔には許せないことだった。  翔は即座に近くにあったボルトを拾いあげ、取引の間に投げ込んだ。  静かな夜の倉庫の中である、ボルトが跳ねた乾いた音が全体に響き渡った。  「誰だっ!」  その場にいた全員が音のした方を振り向くと、木箱の上に黒いコートを着た人物がいた。  「他人の物で取引なんざ、人のすることじゃないぜ」  「なんだ、ガキか」  「返してもらうぜ、そのギターをさ」  「なんのことだ」  「ふざけるな、そいつは元々他人のだろ」  「大人をなめてもらっては困るな、やれ!」  「All right…、そいつは百も承知だからな」  取引をしていた双方の部下達が翔に向かって突撃してきた  それでも翔は動じることなく箱から飛び降りた。  飛び掛かってきた一人の腕を掴み、そのまま翔は関節を極め、相手を沈黙させた。  「な…」  「言っとくけど、俺は強いぜ?」image=419210455.jpg
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