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部屋に戻った翔はミニコンポのスイッチを入れた後、ベッドに飛び込んだ。
そのまま壁際に寝返りをうち、あの日のことを思い出していた。
3年前、中学一年の夏休みの前…。
それが翔の人生全てを変えた日だった。
その日、翔は一年ながら夏の大会のレギュラーに選ばれ、上機嫌で家に帰っていた。
当時の翔は今ほど暗い性格ではなく、年相応に明るい性格だった。
玄関に入ると、そこに父親の靴があることに気付いた。
翔の父親は刑事をしており、めったに家にいることはなかったが、家にいるときは翔達を色々な所に連れて行くなど家族思いな人物だった。
「父さん、帰ってるのかな…。まぁ、いいや」
靴を脱ぎ、翔はリビングに向かった。
そして、ドアの前で一度深呼吸をし、勢いよくドアを開けて自分に起きたニュースを伝えようとした。
「父さん、母さん、俺やったよ!レギュラー取った…」
ところが、その目に飛び込んできたのは地獄だった…。
「!!!!」
あちこちがひっくり返され、カーテンは破かれ、外に通じるガラス戸は大きく割られていた。
それに…。
「な、なんだよ…これ…」
既に両親は冷たくなっていた
おまけに、翔の声は震えていた。
「誰か…説明…してくれよ…」
そこに、姉の麗奈が帰ってきた。
「ただいまー、お腹空いたな…」
だが、直後に叫び声を聞くことになってしまった。
「誰か説明してくれよォーーっ!!!!!」
「どうしたの、翔!!」
「うぅ…あぁ…」
「そ、そんな…」
かばんを投げ出して、麗奈が翔のもとに駆け寄ると、そこで弟が何を見たのかを知ってしまった。
その後の警察の調べで亡くなってから時間が経っていたこと、元々刑事としては人格者であり恨みを買うような人物ではなく、原因も全くわからない状態で事件は迷宮入りしてしまった。
それ以来、翔は他人に感情を見せない、暗い性格になってしまった。
今は、多少持ち直したものの、他人を寄せ付けようとさせなくすることにはかわりない。
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