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☆
気がついた時、アタシの目の前には真っ白な染み一つない天井が広がる。
此処何処?
視線をゆっくりと移動させる。
アタシの腕には点滴の針が突き刺さっていて、
針が繋がるチューブ上に視線を追いかけて行くと点滴パックがぶら下がってる。
そこから、またゆっくりと視線を室内に移していく。
レースのカーテンがゆらゆらと揺れて外から微風が流れ込んでくる。
ふと視線をまた移すとベッドサイドのソファーで持たれるように眠っている嵩兄の姿が視界に移る。
「嵩兄?」
どうして何でアンタが此処にいるの?
せっかく嵩兄から離れようって思ったのに。
私が呟いた言葉に反応して嵩兄の瞼がゆっくりと開かれる。
ソファーから体を起こしてアタシの方に近づいてくる嵩兄。
反射的に視線を合わせられなくて掛け布団を思わず引き上げる。
そんな抵抗もむなしく否応なしに布団は引き戻され、今度は目を閉じる。
……嵩兄……。
「氷夢華……」
ずっと聴きたかった兄貴の声がアタシの名前を呼ぶ。
求め続けた暖かい兄貴の声が、
アタシの中にゆっくりと浸透していく。
アタシはその声に惹かれるようにゆっくりと目を開ける。
その途端、アタシの頭上に降り注いでくる兄貴の手。
叩かれるっ!!
覚悟を決めて体を萎縮させた時、
兄貴の指先がアタシのオデコを軽く弾いた。
「このバカがっ。心配させやがって」
その言葉と共に兄貴の指先がアタシの髪に触れる。
そんな嵩兄のぬくもりをもっと感じたくて、
顔を見たくてゆっくりと目を開く。
そこには随分、心配をかけちゃったのか憔悴しきった嵩兄の姿があった。
ソファーで眠ってた嵩兄は今は白衣は身に着けてない。
……嵩兄……。
アタシの髪に触れるその腕にゆっくりとアタシの腕を絡ませて温もりを感じる。
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