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―――憎しみ。
多分、憎悪のようなモノだと思う。
何故、確定する言葉が出ないかと言うと、感情の起伏を余り経験した事がないからだ。
幼い頃から、薄ぼんやりとした世界の中では大きな感情のブレを無かった。いや、感じる事が出来なかった。
どんな人間と接しても、俺を揺り動かす存在では無かった。
それが、愛情であれ負の感情でさえ。
まぁ、この気持ちの揺れが憎しみであったとしても、それを表情に出すような不様な真似はしないが。
そう、感情を顔に出さない。此れは俺が自負している物の一つだ。
それなのに。
あ、また目があった。
彼奴は何か勘づいているのだろうか。
「もう上がろうぜぇ」
自分の練習は終わったのだから、もう用はないと言いた気にダブルスの相方は、疲れた体でも満足そうに部室へと目指す。
俺はまともに自分の練習が出来ず、不完全燃焼気味で持て余した体をどうしようかとコートを振り返った。
すると又目が合う。
合うが直ぐに、何でもないように視線を外す。
始めは単に、跡部の視線上に俺が居ただけなのだろうと思ってたいたのだが、自分の感情の揺れに気付いてからは、更にその視線が気になる。
何もかも見抜かれているようで、居心地が悪い。
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