川島 誉(カワシマ ホマレ)

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カウンターにアイス珈琲2杯分のお金を置き、貴方は席を立った。 「話しを聞いてもらい有り難うございました」 「お役に立てたか分かりませんがね」 「いえ、マスターのお掛けで決心が付きました。 有り難うございます……」 貴方はそう言って深々と頭を下げた。 私はただ『頑張って下さいね』としか言えなくて、ニコリと笑った。 「じゃあ、また来ます」 「お待ちしてます。有り難うございました」 貴方は背を向けて店を出た。 私は貴方が出ていったドアをただ見ていた。 ポタッ……ポタッ…… と手に水が落ちたと思えば、それは自分の涙で、気付かぬ内に溢れ出ていた。 拭っても拭っても涙は箍が外れたように、止めどなく頬を伝う。 こんなに人を好きになったのは初めてで……。 こんなに人を想って泣くのも初めてで……。 そんな初めてをくれた貴方に出逢えて、心から言える。 ――有り難う ――出逢えて良かった .
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