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あれから数日……。
田宮さんはいくら待っても店には来なかった。
―――……何故、来ないの?
私はいても経ってもいられなく、社員証を持ち田宮さんが勤める会社へと向かった。
受け付けで田宮さんが忘れ物をしたから届けに来たと言い、呼び出してもらった。
あと少しで田宮さんと逢えると思うと胸が高鳴る。
少ししてエレベーターが開いた。
―――田宮さん……。
数日逢わなかっただけで、こんなにも貴方に逢いたかったんだと実感した。
ジッと見詰めていると、不意に田宮さんと視線がぶつかり、私は軽く頭を下げた。
1歩ずつ私は田宮さんに近付く。
そして目の前に行くと、私はコレと言って社員証を差し出しながら言った。
「田宮さんっていうんですね……。
社員証、店に来るかと思って預かってたんですが、来られないから……。
必要な物かと思い、迷惑かとも思ったんですが、届けに来ました」
「マスターも、川島さんって言うから誰かと思いました」
田宮さんが社員証に手を伸ばすと、私はスッと社員証を引っ込めた。
田宮さんは少し戸惑いながら、手元から顔を上げると私はニコッと笑った。
「今日、店に来て下さい。
何時になっても構いません。
コレはその時にお返しします」
そう言うと、田宮さんの返事を聞かずに私は会社を後にした。
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