川島 誉(カワシマ ホマレ)

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――カランコロン いつもの時間にいつもの席に田宮さんは座る。 そんな光景も久し振りに感じる。 「いらっしゃいませ。 コレと……約束の社員証です。」 そう言って私はアイス珈琲と社員証を差し出した。 「ここ何日か来られないから心配してたんですよ? お仕事、忙しかったんですか?」 「まぁ……はい」 「……そうですか」 そんな他愛もない会話をしながら、いつもと変わらずカチャカチャと閉店準備をする。 私は内心、気が気じゃなかった。 コースターの裏に書いたの私の気持ち……。 気付いてもらえるだろうか……。 きっと田宮さんも、今の私と同じ気持ちだったに違いない。 ――カタッ グラスを置く音に、田宮さんを見ると、呆気にとられたような顔をして私を見た。 私は笑い、少し照れながら言った。 「それが私からの返事です。 ……もう、遅いですか?」 「……川島さん」 貴方に届いただろうか……。 たった一言が言えなくてコースターに込めた私の想いを……。 ――《私もです》 という一言が……。 .
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