69人が本棚に入れています
本棚に追加
――カランコロン
いつもの時間にいつもの席に田宮さんは座る。
そんな光景も久し振りに感じる。
「いらっしゃいませ。
コレと……約束の社員証です。」
そう言って私はアイス珈琲と社員証を差し出した。
「ここ何日か来られないから心配してたんですよ?
お仕事、忙しかったんですか?」
「まぁ……はい」
「……そうですか」
そんな他愛もない会話をしながら、いつもと変わらずカチャカチャと閉店準備をする。
私は内心、気が気じゃなかった。
コースターの裏に書いたの私の気持ち……。
気付いてもらえるだろうか……。
きっと田宮さんも、今の私と同じ気持ちだったに違いない。
――カタッ
グラスを置く音に、田宮さんを見ると、呆気にとられたような顔をして私を見た。
私は笑い、少し照れながら言った。
「それが私からの返事です。
……もう、遅いですか?」
「……川島さん」
貴方に届いただろうか……。
たった一言が言えなくてコースターに込めた私の想いを……。
――《私もです》
という一言が……。
.
最初のコメントを投稿しよう!