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チラリと掛け時計に目を遣る。
時刻は19時になろうとしている。
もうすぐあの人が来る。
あの人が初めて私の店に来てから3ヶ月。
平日は欠かさずにこの時間に、いつも決まった席へと座る。
そしていつも注文するのはアイス珈琲で、最近では注文する事なく、勝手にあの人の前に差し出す。
それがお決まり。
――カランコロン
ドアが開きベルが鳴る。
そしてあの人が、真っ直ぐにいつもの席へと座る。
「いらっしゃいませ」
そう言いながら、掛け時計を見ればやはりいつもの時間。
私はあの人に分からない様に、アイス珈琲を準備しながらクスリと笑った。
そして、出来上がったアイス珈琲をコースターに乗せ、前に差し出す。
名前も年も何も知らない常連客。
私はこの人に恋している。
いつから?
と、聞かれたらハッキリとは分からないが、きっと、あのドアを開けて、店に入って来た時からだろう。
人生で初めての一目惚れ。
合う度に惹かれていく。
あの人の事を何も知らないくせに……。
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