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再びカウンターに戻り、新しいアイス珈琲を貴方の前に差し出し、隣の席にホット珈琲を置くと、一言断りを入れて貴方の隣に座った。
あまりにも近い距離。
いつもはカウンターを挟んだ距離が、今は直ぐ右側に貴方がいる。
肩が触れそうで触れないこの微妙が距離が、心をざわつかせる。
「お待たせしました。
店は閉めましたので、邪魔をする人はいませんよ?
良いアドバイスは出来るか分かりませんが、お話しだけなら聞けます」
そう言って私は微笑んだ。
そして、貴方は他人事の様に話し始めた。
「好きな人が居るんですが、どうも最近、恋人が出来たみたいなんですよ……」
私は黙って貴方の話しに耳を傾けていた。
「それで、諦めようか悩んでいて……。
マスターならどうします?
好きな相手に恋人がいたら……」
真っ直ぐ前を見て、貴方は私に聞いた。
あぁ……
貴方は本当にその人が好きなんですね……。
貴方にそんなに想われているその人が羨ましい。
私もそんな風に貴方に想われたかった……。
「…………私なら」
グッと気持ちを抑え言葉を繋いだ。
「気持ちだけは伝えます」
これは自分の願望。
貴方に気持ちを伝えたい……。
そんな勇気もないくせに……。
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