川島 誉(カワシマ ホマレ)

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私の答えが予想外のだったのか、貴方は私の顔を見た。 「意外……という顔ですね」 そんな貴方に私はクスリと笑った。 そして話しを続けた。 「恋人からその人を奪うとかじゃありませんよ? ただ、諦める為にも、自分の気持ちを言って、振ってもらう事が、前に進める第一歩だと思っています」 貴方に話す振りをして、自分に言い聞かせるように話しを続ける。 「奇跡が起こって、自分を選んでくれるかもしれないでしょ?」 そんな事はありえないのに……。 貴方が想い人の話しをする顔を見ていれば分かる。 想い人の事を話す貴方の顔は、今まで見たことのないくらい穏やかで……そしてとても優しい。 「マスターもそうなんですか?」 貴方が想い人を想うように、私も貴方のことが……。 「さぁ……どうでしょう」 誤魔化す様に私は席を立ち、珈琲カップを手に持ちカウンターへと戻った。 貴方の顔を見る事がこんなにも苦しいなんて初めてで、とてもじゃないが隣には居れなかった。 .
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