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翌日も相変わらずな貴方は、いつもの時間に、いつもの席に座り、私は貴方にアイス珈琲を出す。
でも今日は少し貴方の様子が可笑しいように見える。
私はつい『どうかしましたか?』と聞いてしまった。
貴方は自嘲気味にクスリと笑うと、口を開いた。
「昨日、好きな人に想いを伝えたんですが気付いてもらえてないみたいで……。
今日はもう、帰ります。
珈琲……ご馳走様でした。」
殆んど口の付けていないアイス珈琲のお金をカウンターに置き、貴方はドアへと向かう。
そんな貴方を私は止めることなんて出来る訳もなく、『有り難うございます』と去って行く貴方の背に言うので精一杯だった。
あの人が帰った後の店内は酷く寂しく、1人では居た堪れない。
早く家に帰ろうと、あの人が残したアイス珈琲とコースターを片付ける。
グラスをシンクに沈め、コースターを捨てた時だった。
たまたまコースターの裏に何かが書いてあるのがチラリと見えた。
私は急いでゴミ箱からコースターを拾い上げ、恐る恐る引っくり返した。
―――……嘘だ。
あの人の想い人が私だなんて……。
涙が止まらない。
私は『あなたが好きです』と書かれたコースターを、そっと抱き締めた。
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