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「今日も一日がんばりましょう」
振り向くと、取って付けた微笑にワイパーみたいに左右に振られる手が飾られている。どうしてそこまで気を遣うんだ? 中学の時が後ろめたいのか? たぶんそうだろう。
高校の入学式の時、里美はこう言った。まだ沙希姉と張り合って髪を長く伸ばしていた時期だ。髪が伸びる日本人形みたいといじめられた時期でもある。
「私と一緒にいたら香平くんに迷惑でしょ?」
そうかもしれない。
「だからね、学校では他人のフリをしようよ」
笑って言うことじゃないだろ。
「ほら、だから先に行って。ね」
あの時、おれは承諾してしまった。中学の時に懲りていたのだろう。いじめられるのに。
それを今は後悔している。あんな想いをするなら、里美のそばを離れず入学式に向かえば、動こうとしない足に意思を伝達する。手を振り返すとおれは走った。
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