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夢のはずなのに私はその青年であるかのように痛みに襲われた。体内にあるはずのないものがある感覚、そこから染み出てくる熱は火傷でもしたのかと勘違いしそうなものだった。栓の代わりになっていたナイフが抜かれると血が飛び出す。形振り構わず、床に転げまわりたかった。そうでもしないとこの痛みをいったい何にぶつければいいのかわからない。
距離を取った黒いコートがまた詰め寄ってくる。持っていた鞄を投げつけるが黒いコートは怯まずに突進してきた。ナイフを避けようと足がもつれてしまった青年は仰向けに倒れてしまう。
早く起き上がらないと殺される! 死に物狂いで伸ばした手は踏みつけられた。
いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
無理やり折りたためられた腕の筋肉が裂ける。もう片方の腕は踏みつけられているせいでピクリとも動かなかった。痛みで叫んだ口がナイフでさらに大きく開く。
お願いだから!! もうやめて! 殺さないで!
腹が割かれる。何度も何度も何度も。その間、青年は部屋で待っている人のことを想った。大事な人。今日はその人の誕生日だった。何ヶ月にも渡って貯金したお金はこの日のために消えた。なのに……会いたい。こんな別れ方は嫌だ。
知らない感情が痛みと一緒に流れてくる。最後の力を振り絞って青年は叫んだ。血が飛び散るだけで言葉になることはなかったが、黒いコートの怒りを買うのは十分だった。
……これ以上、何をするつもりなの? あは、あははは。そか。………………もう、やだあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 夢ならもう覚めてよ! 誰か起してよ! 痛い、痛いの! ホントだよ! もういいでしょ!!
血で滴る刃の先が目蓋に刺さる。ある程度刺さるとテコの原理で目はくり抜かれた。
片目が見えなくなった。青年の体はもう呼吸はしていない。心臓すら止まっていた。なのに、なのに何で目が覚めないの!?
神経で繋がれた目を手で握り潰す。手には血の他に見たことのないものまでへばり付いていた。ナイフの先がもう一つの目蓋に刺さっていく。
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
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