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「少し遅れ気味だけどこれで里美に会わずにすむ、かな」
おれの些細な願いを口が代弁する。別に里美が嫌いなわけではない。怖い、と思ったことはあるが距離を取りたいと心から思ったことはない。
でも会いたくはなかった。彼女の顔を見ていると罪悪感が湧くから。
学校では里美とおれは赤の他人のフリをしている。『何があっても』だ。何度それをやめようとしたかわからない。でも最後にあることがおれを踏み止まらせた。
それは『これが里美の望んだこと』だからだ。
誰もいないリビングに出発を宣言してから家を出た。エレベーターを呼び出し、乗り込む。液晶の数字を見ることもないだろう。エレベーターは一つ階を降りると止まった。
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