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彼は、輝一と擦れ違い様に囁いた。
「ヒトが生きている理由はな、死ぬためや」
「……ッ!?」
思わず神城を振り返る。
何故か、彼の背中が大きく感じられた。
「…って俺がゆーたら、どないする?」
「どういう意味ですか」
「君は生きるために死ねるんかて聞いてんのや」
肩越しに振り返った神城の眼光が脅威を含み、背筋をぞわりと寒気が走った。
冷や汗が、顎にラインを描いていく。
「ま、冗談やけどな」
ずっこけてしまいそうな発言。
しかし未だに空間を支配する緊張感は残っている。
「そやな。師匠ということで一つええこと教えたろ」
「…何ですか」
「あんまし、生きる意味にこだわったらあかんよ?」
「何故です?」
「ヒトってのは、生きる意味見つけた時、大概死ぬんや」
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