and begin only one story.

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なかなか人に甘えることも上手くできないため、ずっと抱えてきたこの傷はずっと胸にしまったまま。 ‘傷’だと自分の弱さを認めてしまいたくもないが、しこりが残っているのは確かだ。 父と慕う人がいなかったわけではない。その人の前では素直に弱さも見せることができて、甘えられた。 本当の僕でいられた。 まるで、心許せる存在の父が2人いるように思っていた。 彼は俳優をしていて、かなりの年齢を重ねていたが、その姿勢などは尊敬していて目標にしている……存在だった。 理解してくれる人間がいてくれることは嬉しいことで安心して僕の描く世界を表現することができた。 いつか世界で活躍するのが夢だと彼に語った記憶がある。 その彼ももういない。 きっと、この世での役目を果たした彼はあの空から僕を見守ってくれていることだろう。 まだ、未熟な僕を「コウ!!」と可愛がってくれたあの笑顔で。
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