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隠された悪意。
信じていたほどに心を切り裂く悪意の刃。
頭の中が真っ白になった。
「……くく、どうだ? 理解できたか? その痛みはお前が生んだ痛み、御手洗さくらの味わった痛みだ。」
男はお辞儀をし、闇の中にとけていった。
小学生のときの記憶が一気に頭の中を巡る。
脳裏に浮かぶは泣きじゃくる女の子とそれを笑う幼い俺。
俺があの子をいじめればみんなが喜んで俺を誉めてくれる。
ただそれだけで俺はいじめていたんだ。
……最低だ。
後悔しても遅いのはわかっている。
もしも時を戻れるなら、いますぐに謝りにいきたい。
ふと銀色に光る刃物が目にはいった。
どの家庭にもあり最も手に入れやすく、最も身近な凶器。
ゆっくり立ち上がり、その包丁を手に持ち首の前に構える。
……御手洗
お前はすごいよ
俺には耐えられそうにない
いまさらだけど
ごめんな
―ドス
鮮血が部屋を赤く染め、体の力がゆっくりと抜けていった。
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