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驚いて部屋を見渡す。この部屋には誰もいないはずなのに。
でも声の主は静かにベッドの上に立っていた。
先が波うったトンガリ帽子に、濃い青色のローブを纏った小柄な男。まるで童話にでてくる魔法使いのような姿だった。
帽子でよく見えないが、たぶんとても整った顔をしている。
突然の来訪者にその場に固まってしまう。
「死にたいのか? それとも痛みが欲しいのか? それとも痛みを与えたいのか?」
彼が続けざまに質問をする。
淡々としたその声には感情がこもっていない。
さくらはわけがわからずに口をぱくぱくさせる。
「私はPain Taker(ペインテイカー)。お前が私を呼んだのだ。溢れんばかりの憎悪、膨らんだ復讐心。さぁ、望みはなんだ?」
さくらはもうどうでもよくなっていた。望みと聞いて浮かんだ答えは一つ。
「萩原悟に痛みを」
自然と口からでた答え。
「……心得た。今回はお前の心に免じてサービスしてやる。では…」
男は深々とお辞儀をし、瞬きをした後には姿を消していた。
つまらない夢。
夢さえも私を拒絶するのか。
目を瞑ってベッドに倒れこむ。願わくば私は人生をやり直したい……。
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