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「よし、行くぞ」
僕はふぅ、と一息ついてスタートライン…木の横に構えた。
「行くわよ。よ~い、」
ドン、という母親の声と共に僕は走り出した。ひたすら、五本先の木に向かって。
「12…秒。う、うそだろ…」
母親も複雑そうな顔をしている。
そう、僕は走った。確かに走ったんだ。
記録は、12秒。
1週間前と…同じ。
なぜだ、なぜだ。
僕は必死に練習したじゃないか!
「信二…何を落ち込んでいるの?」
そう言ったのは母親だった。落ち込んでる?そりゃそうだ。頑張っても報われなきゃ、そうなるよ。
母親は続ける。
「最初に言ったこと覚えてる?」
最初って1週間前か。
「快感の話?」
確か、辛さや苦しさを越えてやっと得られる、ってやつだよね。
それがどうかし…
そうか。
そういうことか。
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