始まりの決意

8/10
前へ
/37ページ
次へ
「よし、行くぞ」 僕はふぅ、と一息ついてスタートライン…木の横に構えた。 「行くわよ。よ~い、」 ドン、という母親の声と共に僕は走り出した。ひたすら、五本先の木に向かって。 「12…秒。う、うそだろ…」 母親も複雑そうな顔をしている。 そう、僕は走った。確かに走ったんだ。 記録は、12秒。 1週間前と…同じ。 なぜだ、なぜだ。 僕は必死に練習したじゃないか! 「信二…何を落ち込んでいるの?」 そう言ったのは母親だった。落ち込んでる?そりゃそうだ。頑張っても報われなきゃ、そうなるよ。 母親は続ける。 「最初に言ったこと覚えてる?」 最初って1週間前か。 「快感の話?」 確か、辛さや苦しさを越えてやっと得られる、ってやつだよね。 それがどうかし… そうか。 そういうことか。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加