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ここは真珠荘。今年で築50年を迎えることとなるマンション。
外観こそ老朽化して目も当てられないほどぼろいが、一つ一つの部屋は家主により丁寧に掃除され美しく清らかだ。
そして、その一室には
「ふぁあ~。ねみぃ」
と、思ってもいないことを呟く一人の少年がいた。
黒と茶が入り混じり、耳元まで伸びた髪に白淵の眼鏡。
白のフードコートに黒のジャージズボン。
統一性が感じられない服装からはファッションにたいする無関心さ加減がみてとれる。
名を秋田涼(あきたりょう)。今年で16歳になる高校生だ。
時計はもう午前2時を回っていて、黒く染められた夜空には穏やかな陽が昇りはじめている。
なぜ彼はねむいといいながらもこんな時間まで起きているのか。
その理由は彼のある特性にあった。
『寝ることができない』
これが彼の奇っ怪にして単純な特性であった。
それも眠くても何かの病気で寝ることができないとか、全然眠くならないとかではなく。
どうやって寝るのか、理解できなかったのだ。
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