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「のんっ!早くしろよっ!」
「分かってるよっ。」
長く伸ばした髪をなびかせながら、鞄を肩にかけ、黒色のローファーに足を入れる。
「朝っぱらから、教会で何やってたんだよっ。」
ツンツンに跳ねた髪に、まだあどけなかさが残る少年は口を尖らせながら「のん」と呼んだ少女、望(のぞむ)にそう叫んだ。
「んー?別にぃ。」
玄関の扉を締めると、望は少年に駆け寄った。
「大也(だいや)もピカピカの高校一年生かぁー。こーんなに小さかったのにねぇー。」
親指と人差し指で摘むような仕草をする望に、
「そんなに、小さくねぇよっ。今じゃ、お前よりでけぇだろっ。」
ふてくされたように話す大也に、
「あー“お前”だってぇー。生意気ーっ。」
大也の頬をつねりながら望は、教会の上にそびえる十字架を見上げた。
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