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望と大也は、【白ゆり養護施設】と古ぼけた木に書かれた看板がかかる門を出ると、桜の花びらが舞う並木道を歩き出した。
「…のん。」
「んー?」
望は晴れた春の空に、ヒラヒラと舞う桜の花びらを手のひらに取りながら返事をする。
「俺…」
「のぞむーーーっっ!」
ドンッ
「わっ!!」
背中に急に襲われた重みに、望が振り返ると、
「千佳(ちか)っ!」
ショートボムの栗毛。
人懐っこい笑顔で笑う千佳は、望の友達。
高校入学式で挙動不審だった望に、臆することなく声をかけて来てくれた千佳を望は一番の親友だと思っているし、そうでありたいと思っていた。
「おーっ大也っ!ニューだなっ!制服が初々しいぞっ!」
からかうように大也の肩を叩く千佳の手を払いのけると、
「うるせぇよっ!」
「あー照れてるぅ!」
ケラケラ笑いながら、スタスタ歩いていく大也の後ろを追いかける千佳の背後から、大きな欠伸をした背の高い短髪の好青年が姿を現した。
「おはよ。健人。」
「…おー…。」
再び欠伸をする健人を望は首を傾げながら覗き込んで、
「何、寝不足?ゲームでもしてた?」
からかうように笑う望に、健人は一瞬止まってから、
「…違うよ。」
ピンと健人は、望の出ている額に軽くデコピンした。
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